マーク・トウェインが描いた“最初の女性”の物語。
「わたしは生まれてもうじき一日になる。一日歳だ。」
今年もイヴの物語が旅をします。

1905年、アメリカの雑誌『ハーパーズ・マガジン』12月号に掲載された、マーク・トウェインの小説『EVE’S DIARY』。
旧約聖書に登場する人類最初の女、イヴがもし日記を残していたら──。
生まれたばかりのイヴは、目の前の世界を知ろうと、観察と実験を繰り返します。星や月を眺め、動物たちに近づき、気になるものには手を伸ばす。よく見て、考えて、実験して。うまくいかなくても、また試してみる。そうして世界を知ろうとする日々のなかで、喜びや寂しさ、自分でも説明のつかない思いに出会っていきます。
『うっかりキスをして』は、この物語から生まれた一人芝居です。
言葉と身体で世界に向き合うイヴの、可笑しくも切実な一生をたどります。

2019年の初演以来、毎年クリスマスの時期に、さまざまな土地・会場で観客とこの物語を分かち合ってきました。
8年目の今年は、初めて長野県大町市へ。そして金沢では、初演の会場、HARMONIE studioに戻ります。
一年の終わりに、イヴとともに、自分や身近な誰かを思うひとときをお過ごしください。

公演日程・会場・ご予約

「うっかりキスをして」ダイジェスト映像

「マーク・トウェイン『イヴの日記』より」

星もまた素晴らしい。少しとって髪につけることができたらと思う。でも多分、できっこないだろう。星というものはとても遠いところにあるのだ!ということがわかったら、みんなびっくりするはずだ。なぜってそんなに遠くあるようには見えないのだもの。

ゆうべ星が初めて姿を見せた時、私はそのいくつかを竿で叩き落とそうとしてみた。でも竿は届かなかった。私はびっくりした。そこで土くれを投げてみた。へとへとになるまでやってみたが、星は一つも取れなかった。それは私がぎっちょで土くれを上手く投げられなかったからだ。欲しくない方に狙いをつけた時でさえも、欲しい方に当てることはできなかった。何度かはもうちょっと、というところまでいったのだけれども。もう少し頑張っていられたら、一つぐらいは取れたかもしれない。だから私は少し泣いた。

やがて私は少し休んでから歩き始めた。あそこなら星も地面の近くにあるから、私だって素手で取ることができる。そうすれば星を集めるにも、そっと摘み取ってやることができるし、傷めずに済むからだ。でもその場所は思ったよりも遠かった。それでとうとう諦めなければならなかった。

その愛らしい言葉を語っている身体が、どれだけ傷ついているか。

星を取りに、地平線まで歩くイヴ。どれだけ歩き、何度期待し、どれだけ疲れたのか。裸足でその道のりを歩き続ける身体を想像する。欲しいものは遠くにあり続け、とうとう諦めなければならない。
それでも、イヴの言葉は可笑しく、愛らしい。星を髪につけたい。摘み取るなら、星を傷めずに済むように。
──その言葉の奥に、どんな怒りや痛みがあるのか。語るために、何を飲み込んだのか。

『うっかりキスをして』で大切にしてきた問いの一つは、この日記に何が書かれていないのか?ということでした。書き残された言葉から、その言葉に収まらなかった経験や思いを想像する。イヴは何を残そうとしたのか。何を語らずにいたのか。

自分が生まれることは選べなかった。出会う相手も、起こる出来事も、思いどおりにはならない。それでも、自分の生をどんな言葉で残すかには、その人の意思が働く。
日記の言葉に収まりきらない時間を、俳優・梨瑳子の身体が引き受ける。言葉と身体の間に、その人の生が見えてくる。(演出:島 貴之)


翻訳・出演 | 梨瑳子

俳優 / Potluck Theater

東京都生まれ、埼玉県出身。18歳でニューヨークへ渡り、SUNY Rockland Community Collegeにて演劇を専攻、2014年卒業。在米中にマイズナーテクニックを学ぶ。
帰国後は東京を拠点に俳優として活動し、全国各地での公演や滞在制作に参加。2021年に石川県金沢市へ移住し、Potluck Theaterにて俳優・制作を担う。鈴木メソッドを取り入れた身体訓練を続けながら舞台に立つ一方、海外アーティストの招聘やワークショップの企画、市や文化財団からの委託による市民参加型演劇の制作など、活動の領域を広げている。
2019年より一人芝居『うっかりキスをして ― DO EAT APPLES, EVE! ―』を各地で上演。2026年には、アメリカ・韓国・インド・日本の4カ国の俳優による国際共同制作『TORI ―鳥―』を企画・制作し、自らも出演した。
また、ヨガインストラクターとしても活動し、演劇とヨガの両面から、身体と心、他者との関係性を探究している。



長野・大町公演

12月12日(土)15:00
12月13日(日)15:00

全2回公演/各回定員30名/上演時間約90分
※開場・受付開始は開演の20分前


一般:予約2,500円/当日3,000円
18歳以下無料(要予約)
※全席自由
※未就学児入場不可

麻倉Arts&Crafts

〒398-0002 長野県大町市大町4095-13
※お車でお越しの方は、周辺の無料駐車場をご利用ください。

JR信濃大町駅より徒歩10分。
本道りを北に約1km、長野銀行のある交差点を左折。
http://asagura.com/


金沢公演

12月18日(金)19:00
12月19日(土)17:00
12月20日(日)14:00

全3回公演/各回定員20名/上演時間約90分
※開場・受付開始は開演の20分前

一 般 3,500円 (当日:4,000円)
U-22 1,000円(当日:1,500円)
 ※全席自由席
 ※未就学児入場不可

HARMONIE studio

〒920-0997 石川県金沢市竪町40番地 金沢文化服装学院新校舎ビル 2階

https://harmo-nie.com/

Potluck Theater公演
「うっかりキスをして-DO EAT APPLES, EVE!-」

原作:「イヴの日記」マーク・トウェイン
演出・構成:島 貴之
振付:加藤 一郎
翻訳・出演:梨瑳子
美術・ビジュアルデザイン・照明・音響:島 貴之

協力:麻倉Arts&Crafts(長野・大町公演)
企画・制作:Potluck Theater

《お問い合わせ》

Potluck Theater(ポットラックシアター)
メール:po10lucktheater@gmail.com

Potluck Theater(ポットラック・シアター) は、演出家・島貴之によって石川県金沢で設立された演劇団体です。「ことば」と「身体」が交わる瞬間に生まれる力を信じ、古典から現代文学、そして子どもが書いた物語まで、さまざまなテキストを舞台へと立ち上げています。日本各地、さらには海外のアーティストとの協働を展開しています。(演出家プロフィールなど詳しくはこちら→)

Potluck(持ち寄り)の名のとおり、異なる背景を持つ人々が集い、力を持ち寄ることで、演劇の新たな可能性を拓いていくことを目指しています。

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